「ブラックスワンとは?」
「ホワイトナイトって何?」
「ほかにも色の名前がついた経済用語はあるの?」
この記事をご覧の方はそんな疑問を持っているかもしれません。
ブラックスワンとは低確率だが起きると影響が大きいことがらで、ホワイトナイトは買収された企業を助ける企業のことです。
ほかにも、ブルーオーシャンやグレイリノ、グリーンスワンなど経済用語には色がつくものが多くみられます。
今回は色にまつわる経済用語についてわかりやすく解説します。
ブラックスワンとグリーンスワン
ブラックスワンとは
スワン(swan)というのは、英語でハクチョウを意味する言葉。
文字通り、ハクチョウは白い鳥です。
北半球ではそれが常識でした。
17世紀末、大航海時代によりヨーロッパの人々がオーストラリアなどの南半球に到達すると、それまで見たことがない「黒い」ハクチョウが存在していました。
現在、これらの黒いハクチョウは、コクチョウと呼ばれていますが、いないはずの「黒いハクチョウ」の出現により、当時の人々はとても強い衝撃を受けます。
経済の世界でブラックスワンという場合、事前に予想不可能で、発生したときに衝撃が大きい出来事をさします。
確率論や従来の知識・経験などで計り知れない予想不可能な事態というのは、低確率ですが発生します。
リーマンショックやイギリスのEU離脱、トランプ大統領の当選などが代表的な例とされてきましたが、今後は、新型コロナウイルスの登場がブラックスワンの代表例として語られるのではないでしょうか。
グリーンスワン
一方、グリーンスワン(緑のハクチョウ)とは何でしょうか。
グリーンは環境を意味する言葉で、環境が原因で予測不可能なことが起きることをさす言葉です。
ブラックスワンの環境版といった意味で近年使われるようになった言葉です。
例えば、低炭素社会への移行が政府の政策などにより急速に起きた時、二酸化炭素排出量が多い車や火力発電の企業が大幅なコストアップ、あるいは倒産に追い込まれるかもしれません。
投資家たちは、そうした会社の株や社債などを投げ売りしてしまうかもしれません
グリーンスワンはブラックスワンに比べると、長期的な視点で経済を捉えていると思います。
ポスト新型コロナウイルス時、投資家たちは再び環境問題に向き合わざるを得ないでしょう。
実際、バイデン政権が成立することが確実になると環境関連銘柄が大きく値上がりました。
灰色のサイ(グレイリノ)
灰色のサイ(gray rhino)とは、高い確率で発生することが予想されるのに、普段は重要視されず見過ごされがちなことをさす言葉。
サイは草食で、鈍重なため「おとなしくて無害」と思われがちな動物です。
しかし、ひとたびサイが怒ると暴走特急のような勢いで周囲の物を薙ぎ払い、敵を攻撃します。
いつもはおとなしくて地味(だからgray)なのに、暴れだしたら手を付けられないサイの特徴から名づけられた経済用語ですね。
例えば、各国政府や自治体がおこなっている借金(国債)や先進国で多く見られる少子高齢化、グリーンスワンでも取り上げた環境問題なども灰色のサイではないでしょうか。
人間というのは、どうしても長期的なものは後回しにしがちです。
しかし、そういった後回しの要素こそ、表面化した時に経済的ダメージが大きいものとなります。
ブルーオーシャン戦略
21世紀の初め、チャン・キムとレネ・モボルニュは『BLUE OCEAN STRATEGY』を著しました。
この中で、彼らは競争の激しい業界を「レッドオーシャン」、つまり、日々の戦いで傷つき、血で染まった海と表現します。
競争の激しいレッドオーシャンでの戦いを避け、未開拓領域である「ブルーオーシャン」で事業を行い、会社を成長させるべきだと説きました。
よく例として出されるのは、サーカス業界の「シルク・ドゥ・ソレイユ」です。
サーカス産業は来場者の減少や娯楽の多様化などにより売り上げが右肩下がりの斜陽産業でした。
シルク・ドゥ・ソレイユは、動物を使った曲芸をなくし、人間が演じる芸に集中。大道芸やオペラ、ロックの要素を取り入れ、「魅せる」ショーとして人々に新しいサーカスを提案しました。
とはいえ、ブルーオーシャンであってもブラックスワンが出現すると大打撃を受けかねません。
シルク・ドゥ・ソレイユは、新型コロナウイルスの影響で90%の従業員を解雇し何とか生き残りを図っていますが、うまくいくかは不透明です。
残念ながら、シルク・ドゥ・ソレイユは2020年6月に破産を申請しました。
現在は従業員をいったん解雇し、一から再生するチャンスを狙っています。
エンターテイメントは、人々の心にゆとりや希望をもたらすと思うので、ぜひ、復活してほしいと思いますね。
ホワイトナイト
ホワイトナイト(白い騎士)は、敵対的買収を仕掛けられた企業を支援し、友好的な買収または合併をする企業のこと。
白馬の騎士=正義の味方、自分たちを救ってくれる救い主という発想から生まれた言葉なのでしょう。
かつて、日本では敵対的買収は活発ではありませんでした。
しかし、2000年代以降、大規模な敵対的買収案件が見られるようになります。
株式会社は、発行している株数の過半数を制することで、その会社を「保有」することが可能です。
ある企業を強引にでも手に入れたいと考えた場合、その企業の株を買って経営権を得るのは悪いことでも何でもありません。
近年では大戸屋の買収がこれにあたります。
買収される側が買収に同意しない場合、買いたいと思う会社が「株式公開買い付け(TOB)などを使って無理やり会社の株を手に入れようとすることがあります。
買われる側の経営陣が同意していないことから、「敵対的買収」と呼ばれてしまうんですね。
2001年の村上ファンドによる昭栄株の公開買い付けやライブドアによるニッポン放送株の大量取得、アメリカの投資ファンドであるスティールパートナーズが行った明星食品の買収などが敵対的買収とみなされました。
明星食品の場合、日清食品がホワイトナイトとして登場し、スティールパートナーズ以上の金額で明星食品を買収しました。
まとめ
経済にまつわるカタカナ語はたくさんあります。
グローバル経済が当たり前である現在、もっともっとカタカナ語は増え続けるでしょう。
新型コロナウイルスの影響が収まった後、新しい「グローバルスタンダード(世界標準)」が作られるのではないかという憶測が流れる中、いままでの経済用語を見直すのもよいのではないでしょうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。