「地理学ってどんな学問?」
「地理と地学、地政学って何が違うの?」
「受験科目としての地理のメリットは?」
「どんな大学で学べるの?」
このページをご覧になっている皆さんはそのような疑問をお持ちかもしれません。
地理学とは、
地球表面のいろいろな自然および人文の現象を研究する科学
出典:地理とは - コトバンク『デジタル大辞泉』
とされます。
つまり、地球上の自然条件や人間活動の結果、起きている現象を研究する学問です。
自然現象を扱う「地学」や、政治・経済・軍事など扱う「地政学」とは扱う範囲が少し違います。
今回は、地理学がどんな学問か、地理学と地学・地政学との違い、受験科目としての地理のメリット、どんな大学で地理を学べるか、地理のおすすめ本などについてまとめます。
地理学ってどんな学問?
現在、学校教育で扱われている「地理」は2つの内容から成り立っています。
一つは主に自然現象や地形などに注目する「自然地理学」。
もう一つは人間活動に注目する「人文地理学」です。
地域を絞って自然地理と人文地理をまとめて扱うのが「地誌」で、これをいれると3つに大別できます。
自然地理学
自然地理学とは
「地形・気候・海洋・陸水・土壌・生物などの自然的環境について、その分布や相互関係、人間との関係などを研究」する学問。
言い換えると、自然環境の法則性や自然が人間社会に与える影響について研究する学問です。
気候や地質、降水量、熱循環など理科的な要素の理解が必要不可欠となる点で理系寄りといってよい内容です。
人文地理学
人文地理学とは、
「人間およびその文化・社会・経済などを対象として、その地理的分布、地域的な特色、地域間や環境との関係などを研究する学問」。
こちらも言い換えると、 人間社会のありようを地理的な特徴と結びつけて研究する学問です。
社会・経済・文化など社会科学的な要素が強い点で文系寄りといってよい内容です。
地理と地学・地政学の違い
地学とは
地学とは
「地球およびその構成物質に関する科学。地質学・地球物理学・地球化学・岩石学・鉱物学・海洋学・気象学・地形学などを含む。高等学校の教育課程では天文学も含め」る学問。
出典:地学とは - コトバンク『デジタル大辞泉』
つまり、高校で教わる「地学」は、地球に関する理科的な学問と天文学に関する学問によってなりたちます。
その点で、自然地理学と共通する内容を多く含むといってよいでしょう。
地政学とは
地政学とは、
民族や国家の特質を、主として地理的空間や条件から説明しようとする学問。
出典:地政学とは - コトバンク『デジタル大辞泉』
地理的条件と人間の営みをリンクして考えるという点で人文地理学に近い要素を持ちます。
地政学について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ!
受験科目としての地理のメリット
社会科の科目選択の際、文系なら地歴から1つ、公民から1つを選ばなければなりません。
理系であっても、国公立大学を受験する場合、共通テストを受ける関係から、地歴・公民から1つ選ばなければなりません。
その際、地理を選ぶとどのようなメリットがあるのでしょうか。
歴史科目より暗記量が少ない
地理と日本史・世界史といった歴史科目では暗記量がどのくらい違うのでしょうか。
一例として山川出版社の用語集の収録語数で比較しましょう。
2018年度版の各科目の収録用語数は次の通りです。
日本史 約6600語
世界史 約5600語
地理 約3700語
地理が際立って少ないことがわかります。
社会系科目である以上、暗記要素の排除はできません。
しかし、歴史系科目と比べると覚えるべき単語が少ないのは一目瞭然でしょう。
単純暗記が苦手という人にとって、地理は非常に魅力的だといえます。
論理的理解が大切
暗記量が少ないからといって、地理が”カンタン”というわけではありません。
地理で高得点を取るためには、論理的な理解が必要不可欠です。
例えば、地球上で砂漠になりやすい場所というのは決まっています。
砂漠になるのは
①中緯度高圧帯の付近(回帰線砂漠)
②内陸地帯(内陸砂漠)
③偏西風があたる山脈の風下にあたる場所(雨陰砂漠)
④寒流のそば(海岸砂漠)
この4か所です。
もちろん、地図で一つ一つの砂漠を覚えることでも問題が解けるのですが、砂漠になりやすい場所の法則をつかんでいると、暗記してなくても砂漠だと判断できるのです。
①のわかりやすい例はサハラ砂漠。
中緯度高圧帯は、つねに高気圧。
だから、雲が発生しないので砂漠化する確率が高くなります。
ユーラシア大陸の中央部は海岸から遠く、雨雲が到達しにくいため砂漠化しやすいのです。
サハラ砂漠は中緯度高圧帯であり、かつ、内陸なのであんなに広い砂漠になったのです。
常に西から吹く偏西風がアンデス山脈にあたると、山脈の風上側(チリ側)で雲ができ、雨が降ります。
水分をチリ側に置いてきた風は、アンデス山脈を吹き降りてアルゼンチン側に達するころには乾ききっています。
いつも乾いた風が吹くパタゴニアには雨が降らず、砂漠化しやすいのです。
④の例はチリ沿岸のアタカマ砂漠。
寒流が沖合を流れていると、海岸付近の空気が冷やされます。
冷たい空気は暖かい空気に比べて重く、冷たい空気がずっと地表付近にとどまります。
そのため、雲を作るために必要な上昇気流が発生せず、砂漠化しやすいのです。
もちろん、このほかにも論理的な理解で暗記せずとも解ける問題が数多くあります。
暗記が苦手な人ほど、地理を選ぶメリットがあるといえるでしょう。
地理を学べる大学の例
地理を学べる大学の例として東京都立大学を紹介します。
東京都立大学(旧首都大東京)
東京都立大学の中で地理学を学びやすいのは都市環境学部の3学科です。
①地理環境学科
この学科は自然と人間が主な研究テーマです。
自然地理・人文地理・地理情報など地理学に関してまんべんなく学ぶことができるというメリットがあります。
フィールドワークが充実しているのもこの学科の特徴ですよ。
②都市基盤環境学科
この学科は自然や環境と調和する建造物が主な研究テーマです。
社会基盤分野、環境システム分野、安全防災分野という3分野を研究できます。
地球環境が大きく変化している今だからこそ、必要とされる分野かもしれません。
③観光学科
この学科は多様な視点から観光を科学的に研究します。
自然環境を利用する観光や地域で生まれる文化を観光資源として活用する方法、観光関連企業・組織が観光者のニーズに合ったサービスを提供する方法などを研究します。
まとめ
地理学は自然地理学と人文地理学、地域を絞って学ぶ地誌に分かれます。
それぞれ、学ぶことができる大学がことなるので進路決定の際には下調べをしっかりしておきましょう。
また、大学の先生方の専門も調べ、自分の学びたいことが学べるか、事前に抑えておくことも大事です。
地理学は地球科学中心の地学や、経済や文化など社会科学に力点をおいた地政学とは異なります。
しかし、その両方の視点を学べるとても興味深い学問分野です。
論理中心なので、歴史系よりも暗記が少ないというメリットもありますから、それを生かすこともできるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。