「トルコってどんな国?」
「近代トルコの歴史とは?」
「トルコの歴史や地理について知りたい!」
このページをご覧の皆さんはそのようなことをお考えかもしれません。
トルコはヨーロッパとアジアにまたがる国で、政教分離を国是としています。
その理由は建国者のケマル=アタテュルクがイスラム教徒政治を分離したからでした。
近年、トルコではエルドアン大統領の政権が続いています。
エルドアン政権はイスラム教への回帰傾向が強まっているという指摘があります。
また、エルドアン大統領は金利引き上げに対し強い抵抗感を持っているため、利上げする中央銀行総裁を何度も更迭しました。
こうした利上げ反対によりトルコリラの価値は下落し、トルコリラは歴史的な安値を記録しました。
今回は近代トルコの基礎知識やトルコの地理、投資対象としてのトルコについてまとめます。
トルコ共和国の歴史
第一次世界大戦がおきる前、オスマン帝国がトルコなど中東諸国を支配していました。
そればかりか、隣国のギリシアがトルコの本国である小アジアに攻め込むなど、トルコは滅亡の危機に立たされていました。
トルコ共和国の建国
第一次世界大戦に敗れたオスマン帝国は連合国の要求を受け入れ、領土の多くを失いました。
トルコの隣国であるギリシアはオスマン帝国の弱体化を好機とみなして、トルコ領土に侵攻します。
無力化したイスタンブルのオスマン帝国政府はギリシア軍になすすべがありません。
その時、アンカラで立ち上がったのがムスタファ=ケマル(ケマル=アタテュルク)でした。
ケマルはトルコ国民軍を組織してギリシア軍にゲリラ戦を挑みます。
ギリシア軍と戦う準備を整えたケマルは1921年のサカリャ川の戦いでギリシア軍に勝利。
ギリシア軍が占領していたイズミルも奪い返してギリシア軍を追い出しました。
国民はイスタンブルのオスマン帝国政府より、アンカラのケマルの政府を支持します。
その結果、1922年にトルコ共和国が成立しました。
ケマルが定めたトルコ共和国の政治体制
ケマルは国の方針として、共和主義、民族主義、人民主義、国営主義、世俗主義、改革主義の6つを掲げます。
これにより、イスラム教が政治も宗教も支配する政教一致を否定して政教分離を成し遂げました。
ケマルはアラビア文字を廃止し、ローマ字を採用する文字改革の実行やイスラーム暦の廃止、法律の西洋化などを進めます。
さらに、一夫多妻制度の廃止や女性専用の衣装であるチャドル着用の反対運動など、女性解放を進めました。
ケマルが掲げた政教分離と世俗主義はトルコ共和国の国是とされ、歴代政権に受け継がれました。
エルドアン政権の動向
近年、ケマルが定めた政教分離と世俗主義は揺らぎつつあるといわれます。
2003年に首相に就任したエルドアンは2007年と2011年の総選挙で勝利をおさめます。
エルドアンが所属する公正発展党はEU加盟や自由市場の維持を掲げる保守系政党ですが、同時にイスラム主義の傾向が強い政党でもあります。
エルドアンはSNSに対して否定的な立場をとっていることでも知られる政治家です。
ツイッターやFacebook、YouTubeの遮断を示唆したこともあります。
実際、YouTubeを遮断させたこともありますね。
2014年、エルドアンは大統領選挙に勝利。政権基盤をさらに確たるものとします。
それに対し、軍の一部は2016年にクーデタを計画しました。
しかし、このクーデタは未遂に終わります。
国内の基盤を確立したエルドアンは北部シリアに対して侵攻をおこなうなど強権的な姿勢も見せていますので、今後も注視する必要がありますね。
なお、エルドアン政権はトルコリラの金利を引き下げようとする傾向があります。
金利が上昇すると国内経済に悪影響が出るからです。
もし、トルコが利下げを連発するようなら、トルコリラの下落傾向は強まるかもしれませんね。
実際、エルドアン大統領は利上げを進める中央銀行総裁を幾度も更迭しました。
そのたびに、トルコリラは下落しています。
トルコ共和国の地理
トルコ共和国の基礎データ
トルコ共和国の面積は日本のおよそ2倍。人口は約8,200万人です。
他にも港湾都市のイズミルや小アジアにあり、かつてオスマン帝国の都が置かれたこともあるブルサなども100万人を越える都市です。
主要民族はトルコ人。国土の南東部にクルド人が居住しています。
そのほか、割合は少ないですがギリシア人やアルメニア人、ユダヤ人なども居住しています。
主要言語はトルコ語。
使用文字はケマルの改革で定められたローマ字です。
トルコ共和国の地理的特徴
トルコの国土はヨーロッパとアジアにまたがっています。
また、トルコの北にある黒海と南にあるエーゲ海、地中海を結ぶという重要な場所でもあります。
トルコ最大の都市であるイスタンブルは交通の要衝に位置しています。
それゆえ、たびたび戦争の舞台にもなりました。
国土の大半を占めるのはアナトリア半島。
中央部の広大な高原と海沿いのわずかな平野から成り立っています。
国土の東部にはノアの箱舟にも登場するアララト山などの高山がありますよ。
トルコはアルプス=ヒマラヤ造山帯の上にあり、地殻変動が活発な国。
そのため、各地に断層があり、地震が多いことでも知られています。
国内には多くの温泉があり、パムッカレは世界遺産としても知られています。
トルコ共和国の経済的特徴
トルコは近年急速に経済成長を遂げた新興国です。
2013年のGDPは8,200億ドル、一人当たりのGDPは10,721ドルで先進国とは言えませんが、世界平均をやや上回っています。
工業の中心は繊維や医療などの軽工業です。
近年、世界の大手自動車メーカーが進出したことにより自動車生産が外貨獲得の手段となりつつありますね。
進出しているのはイタリアのフィアットやフランスのルノー、日本のトヨタなどですよ。
鉱産資源にも恵まれています。
代表的な資源は石炭です。
近年、黒海沿岸で石油や天然ガスが埋蔵されていることがわかり、国内消費40年分以上あるとの推測もされています。
トルコは観光業が盛んです。首都のイスタンブルはオスマン帝国時代の街並みと古代ローマの遺跡や東ローマ帝国の遺産などもあり観光資源にも事欠きません。
しかし、2020年のコロナ危機で観光業は壊滅的打撃を受けています。
新興国にありがちなのがインフレ。
トルコでもインフレは大きな経済問題となっていました。
2009年、100万トルコリラを1新トルコリラとするデノミネーションが行われ、2019年10月段階ではインフレは終息の方向に向かっています。
とはいえ、トルコが利上げしない方針を取ればインフレの確立が上がり、再びトルコリラの通貨価値が下落する恐れがあります。
トルコ投資の可能性と注意点
トルコ投資の可能性
トルコは新興国の中でも有望視されてきました。
人口規模が大きく、国内事情は比較的安定してきたからです。
中進国の中でも好調だったトルコに対して投資を進める意見もインターネット上に多く見られました。
先進国に比べて政策金利が高く、スワップ金利を得やすいとしてトルコリラ投資を勧誘する記事が多数掲載されています。
経済中心であるイスタンブルはヨーロッパの主要都市に勝るとも劣らない活況を呈しています。
また、近年は黒海周辺のビジネスが活発になるにつれ、黒海南岸に領土を持つトルコの重要性も増しつつあります。
地政学的な意味でも、経済的な意味でもトルコの役割は重くなりつつありますね。
トルコ投資の注意点
とはいえ、トルコにも注意すべき点はあります。
一つ目はエルドアン政権の経済政策。
基本的にエルドアン政権は経済成長を優先させるため金利が高くなることを望まず、輸出促進のためのリラ安をよしとする傾向があります。
FXなどでトルコリラを「ロング」でポジショニングする場合、通貨の急落に注意が必要です。
中央銀行総裁が利上げするつど、エルドアン大統領は総裁を更迭。
利上げさせないよう誘導しました。
そのたびにトルコリラの価値は下落していますので要注意です。
二つ目は民族問題。
特に、国土の南東部に居住するクルド人問題はトルコにとって頭痛の種です。
ほかにもギリシアやアルメニアなどとも緊張関係にあることは知っておくべきでしょう。
三つ目はアメリカとの関係です。
トランプ大統領がシリアからアメリカ軍を撤退させた時、エルドアン政権はすかさずシリア北部のクルド人支配地域を攻撃しました。
こうした行動が原因でアメリカと対立する可能性があります。
さいごに
非常に親日的で、明るく親しみやすいトルコ。
日本人にとって居心地が良い国かもしれません。
いろいろな問題は抱えていますが、トルコの安定は中東地域の安定にもつながります。
円滑に経済発展することを望みたいですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。