「令外官って何?」
「どの令外官が入試に出るの?」
このページをご覧の皆さんはそのようにお考えかもしれません。
令外官とは、律令の定めになく、あとから設置された特別職です。
よく出る令外官は征夷大将軍、勘解由使(かげゆし)、蔵人頭(くろうどのとう)、検非違使(けびいし)の4つです。
この4つは職の内容と誰が設置したかがよくきかれます。
今回は「令外官」について超わかりやすく解説します。
なお、平安時代の流れについて知りたい方はこちらの記事もどうぞ!
令外官とは
いつから始まった?
大宝律令が出されてすぐの飛鳥時代末期に令外官は始まりました。
飛鳥時代には中納言、奈良時代には按察使(あぜち)や参議、内大臣などが設置されます。
令外官の意味とは?
令外官とは、令の規定にない新しい官職のこと。
現実に即し、必要に応じて設置されました。
文字通り、「令」の「外」にある「官職」です。
役人の官位を定める「官位令」や仕事の内容を定める「職員令」は令の一部です。
これらに定められていない追加・例外的な官職を令外官といいました。
なぜ、令外官はつくられた?
律令で補いきれない事柄を解決するため、令外官は設置されました。
飛鳥時代から奈良時代にかけて、中国に派遣された遣隋使・遣唐使は、中国の法律である律令を学び日本に持ち込みました。
そして、701年に大宝律令、718年に養老律令を制定します。
しかし、中国の法律である律令は日本の実情に合わないことや不足していることがありました。
そこで、日本独自に改良を加えます。
それでも、完全には補いきれず、令外官を設置して処理することにしたのです。
ところで、"律令"って何?
律令はもともと中国の法律です。
律が刑法、令が行政法でした。
日本では701年の大宝律令や718年の養老律令が知られています。
ちなみに、律令を補足・修正する法律を格、実際の施行規則を式といいます。
そのため、まとめて律令格式とよばれることもありました。
入試頻出!よくでる令外官4つ
大学入試の登竜門である共通テスト。
共通テストは基本問題を中心に出題されます。
もっとも出題頻度が高いのは征夷大将軍、勘解由使、蔵人頭、検非違使。
それぞれ、誰が制定したかや関連事項と共に出題されます。
桓武天皇が制定した令外官
桓武天皇は奈良時代の末期から平安時代の初期にかけて、律令制度を立て直そうとした人物です。
桓武天皇は都を平安京に移す一方、行政改革や東北遠征などに力を入れました。
征夷大将軍
征夷大将軍は東北地方の蝦夷を平定するため設置された臨時の将軍職です。
文字通り、「蝦夷」を「征討」するための役職でした。
797年、征夷大将軍に任じられた坂上田村麻呂は頑強に抵抗する蝦夷の族長阿弖流為(あてるい)と戦います。
坂上田村麻呂は東北支配の拠点である鎮守府を多賀城から胆沢城に北上させ、東北制圧を進めます。
ちなみに、東北各地には坂上田村麻呂にまつわる伝説が残されています。
福島県中通りにある田村市や三春町を治めた田村氏は坂上田村麻呂の子孫を称しました。
1192年、奥州藤原氏を滅ぼした源頼朝は自ら望んで、征夷大将軍に任じられます。
奥州藤原氏について知りたい方はこちらの記事もどうぞ!
以後、征夷大将軍をトップとする「幕府」が強い力を持つ日本独特の仕組みがつくられました。
征夷大将軍をトップとする幕府は、鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府と引き継がれます。
頼朝が任じられて以後の征夷大将軍は、平安時代までの征夷大将軍と全く別物と考えてよいでしょう。
勘解由使
勘解由使は「解由状」を「勘」(チェックする)する使(特別職)です。
解由状とは、国司交代のときに前の国司が、次の国司に引き継ぐ書類のことです。
桓武天皇の時代、この引継ぎでトラブルが多発しました。
そこで、あらたに勘解由使を設置し、前の国司の報告書である解由状の内容をチェックさせることにしました。
嵯峨天皇が制定した令外官
蔵人頭
天皇の側近にいて、機密文書を扱う役職。
嵯峨天皇が兄の平城上皇と対立した時、相手方に機密が漏れないよう、機密を扱う役職を新たに作りました。
この蔵人頭は、嵯峨天皇と平城上皇が対立した薬子の変で嵯峨天皇勝利に貢献します。
蔵人頭や蔵人所に所属する蔵人たちは、天皇の秘書のような仕事をしました。
検非違使
京中の治安維持にあたった役職。
「非違」(悪いこと)を「検」(取り締まる)「使」(特別職)。
京都を守る警察のような仕事がメインでした。
のちに、治安維持だけではなく裁判も扱うようになります。
検非違使は白河上皇が北面の武士を設置するまで、強い力を持ちました。
その後、北面の武士や鎌倉幕府が設置した六波羅探題などにより弱体化します。
まとめ
律令が施行されてすぐに設置され、必要に応じて追加されました。
試験に出やすい令外官は4つ。
そのほかに、押領使や関白、追捕使なども出題されますので、入試までに抑えておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。